四日市のとんてき 來來憲

四日市は「とんてき」が名物なんだそうだ。昨今のB級グルメブームに乗っかって、ビフテキならぬ「とんてき」つまり豚ロースを焼いたものを町おこしに利用している。「とんてき」の語感から豚ロースのステーキを想像するが、違う。にんにくがゴロゴロと入っていて、ソースで炒めてある。豚の肉汁とソースが皿の底にドロリと溜まっていて、このいかにも作業服のあんちゃんたちがガツガツと食べていそうな高カロリーな感じが工業都市・四日市のイメージにぴったり合っている。
今回は元祖とんてきの店を銘打っている來來憲で、來來定食を食べる。大とんてき定食はB級グルメにしてはちょっとお高いので、いただかない。來來定食は「とんてき」をこま切れにして炒めたもの。味はたぶん変わらない。ご飯、トン汁、キャベツのおかわり自由なのが良い。
トンカツを食べてキャベツを残す輩がいる。これはパセリやレタスを飾りだと思って残すのと同じく許し難い行為である。むしろ、トンカツはキャベツの千切りを食べるためのものと言っても過言ではない。トンカツから、その油を絡め取りながら滴り落ちたソースでキャベツを食べるから旨いのだ。そして「とんてき」もまた然り。
にんにくの効いた、「とんてき」の肉汁と混ざり合ったソースにキャベツを浸して食べるのが醍醐味。素晴らしい。