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大学時代を思い出して [Arcives_ローカルな思想を紡ぐ]

大学の恩師から、文章を依頼された。来年度から学科のカリキュラムが改編されることから、学科の名物だった「社会調査・地域調査」という必修授業が無くなる。そのため、、その思い出や役に立ったことをまとめて欲しいとのこと。「社会調査・地域調査」は社会学科1年生の必修科目。前期にグループごとに調査のテーマ、調査方法を決め、後期にアンケート調査、分析を行うといういかにも社会学科という内容だった。主にはアンケート調査を実践し学ぶというものだったが、夏季課題では聞き取りでライフヒストリーをまとめるという課題があり、「社会調査・地域調査」で最も印象に残っているのは、実はその課題のほうである。
というのも、そのときのレポートは「昭和ヒト桁のライフヒストリー」と題して、私の大叔父の生き様についてまとめたのだが、その年の末に大叔父は亡くなったこともあり、私にとって課題のレポートとして以上に意味のあるものになったからだ。大叔父は、実際は大正15年の生まれなので一般に言う昭和ヒト桁とは少し違う。信州の農村の次男坊として育ち、朝鮮総督府に就職した戦前、いったんは就職しその後農業をはじめた。どちらかと言えば左派に近い考え方を持つ大叔父だが、占領下の朝鮮での日本人と朝鮮人との関係は決して悪くは無く、職場の仲間とは酒を酌み交わして、お互いに仲間意識を持って仕事をしていたという話は新鮮だった。そこからは、暗かった戦中や、朝鮮人に対する差別などが書かれた教科書の歴史や、歴史書の歴史からは見えてこない、同時代のナマの証言を聞くことが出来た。また、亡くなる前に、そのわずかな一端ではあるが、大叔父の人生を文章にすることが出来た。
大学生の勉強とは文献を読み漁って、論文を書くことだと入学するまでは思っていた。しかし、理屈をこねくり回すよりも、理論を振りかざすよりも、暮らしを営んでいる1人1人の人の目線からものを考えることが重要なのだと気がついたのは、この課題を通じてだったのかもしれない。いまだに人の話を聞く、聞き出すというのは苦手なのだが、その後、フィールドワークを中心に据えている地域経済論ゼミに入ったのは、色々な人の思いや考えを聞きたいという興味の延長でもある。

現在は、出版社で営業職にあるが、相手の思いや考え、ものの見かたを引き出せなければ、こちらの営業も届かない。まあ、そう上手くいかないものなんだけど。
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