SSブログ

諫早湾にいた冬 [Arcives_ローカルな思想を紡ぐ]

諫早湾干拓工事中 諫早湾の干拓が完成したそうだ。

 2年前の2005年の冬、長崎県にいた。12~1月の2ヶ月間長崎県に滞在したが、うち12月は諫早市にいた。毎日、雲仙普賢岳と諫早湾の干拓工事を眺めながら仕事をしていた。300人以上の農家に会ったが、諫早湾干拓を悪く言う農家にはほとんど出会わなかった。会ったのは、「干拓地での農地取得を申請してある」とか「あそこで大規模にアスパラ生産をする」という言葉。希望に満ち満ちた顔で言う人もいて、批判的な報道ばかり見ていただけに軽くショックを受けた。

 干拓地に農地を得るには競争率が非常に高いという話も聞いた。

 長崎県は日本で最も長い海岸線と多くの島を持つ県である。離島の面積が県域の約45%を占める。稲作を大規模にできる地域はわずかに諫早平野と壱岐島、北松浦だけ。平らな田んぼは干潟や干拓によって作られた。ほとんどが起伏が激しい山である半島は畑作(ジャガイモ生産量は北海道に次いで第2位)と果樹生産が盛んで、田んぼは沢沿いにわずか。かつて主食は麦とサツマイモという地域である。「かんころ(切干芋)」「ろくべえ(芋のうどん)」「いも飯」など非常に多様なサツマイモ料理が今でも残っており食べられている。

 そういった地域性から想像するに、平らな広い田んぼに対する憧れはあると思う。芋をさまざまに工夫して食べていたということは、苦労して食べてきたことの裏返しでもある。江戸時代から干拓してきた諫早湾を大規模に埋め立てようという発想は悲願だったのかもしれない。

諫早湾干拓工事中_向こうに見えるのは島原半島

 約680町歩(ha)の農地造成にかかった費用2533億円、1町歩あたり3億7200万円そうだ(朝日新聞2007年11月20日夕刊)。仮に米を作ったとして、安く見積もって10,000円/俵(もっと下がるか?)、反収10俵(こんなに穫れないか?)で計算すると、1,000,000円/町歩となる。400年近く米を作り続けてやっと農地造成費用の元がとれる。売り上げだけの計算なので、収益などと言ったら途方も無くかかる。

 そもそも投資に見合った利益が上がるような事業ならば、個々人や私企業が勝手にやればいい。数百年先まで見据えた大事業だから公共事業でやるのだ。税金の無駄遣いと言う手合いは目先の利益しか見えていない。

 ノリが不作になって漁業に打撃を与えていること、生態系への影響は検証が必要なのはもちろんだが、それを持って事業が失敗というのも性急だろう。成功したかどうかは数十年先になってみないと判らないだろう。

 そういえば、諫早に行ったのにムツゴロウの蒲焼を食べていなかった。

■朝日新聞「諫早湾干拓、完工式 着工18年、「反対」続く中」(リンク切れ)
■西日本新聞「環境保全型の営農懸念 諫早湾干拓完工 水質改善されず 購入費償還に100年」(リンク切れ)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

高速道路に白い影!四万十市にて ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。